平成30年に内閣府より「生活状況に関する調査」と題して中高年のひきこもりに関する調査が行われました。(平成31年3月発表)
内閣府では、平成 21 年度と平成 27 年度に子供・若者を対象としたひきこもりに関する調査を 実施したところ、ひきこもりの長期化傾向が明らかとなった。
https://www8.cao.go.jp/youth/kenkyu/life/h30/pdf/s1.pd
内閣府によるひきこもり調査は過去にも実施されてはいましたが、「若者の生活に関する調査」と題して満15歳~39歳の若者(及びその家族)のみを対象としていました。平成27年度(2015年)の調査を受けて、中高年ひきこもりへの対策検討に乗り出したというところのようです。
不可視状態が続いた中高年ひきこもり
かねてより福祉に携わる人たちの間では中高年のひきこもりとその親の老齢化が問題視されていましたが、一般的にはあまり認知されていない状況が続いていました。
ひきこもり調査の根拠法が「 子ども・ 若者育成支援推進法 」だったため、この法律上で定義される青少年のみ(30歳まで、施策により40歳未満)が調査の対象とされていたようです。
この法律のほかにはひきこもりへの対応を謳ったものはありませんので、調査対象とされていない≒そもそも対策を講じる対象とされていないという状況だということになります。
実際、行政福祉に携わる筆者の知人は「ひきこもりは35歳までならなんとかなる」と常々口にしているほど、福祉サービスでの対応も年齢で大きく変わるというのが現状のようでした。
行政として「中高年ひきこもり」を初めて定義
2018年度に実施された「生活状況に関する調査 (平成30年度)」では今までの調査対象であった満15歳~満39歳は一切対象とはせず、満40歳~満64歳という中高年のみを対象としています。
「若年者のひきこもり」とは明確に区切り「中高年のひきこもり」を行政としてはじめて定義したと言えます。
平成22年4月1日に施行された「子ども・若者 育成支援推進法」第17条において、「国及び地方公共団体は第15条第1項に規定する子ども・若者 が社会生活を円滑に営む上での困難を有することとなった原因の究明、支援の方法等に関する必要 な調査研究を行うよう努めるものとする。」とされている。
この調査は今までの調査と同じく「 子ども・ 若者育成支援推進法 」 を根拠としており、現時点では「子ども・若者のひきこもりの長期化への対策」という位置づけにはなりますが、各省庁での福祉サービスや雇用対策でも対象グループのひとつとなっていく第一歩ともいえます。
調査の概要
本調査は本人票13項目と同居者票8項目の2つで構成されていて、同居者票のすべての項目が本人票と対応する形になっており、結果比較ができます。
今までの若年者向けの調査でも同様に比較可能な形式となっていましたが、今回の「中高年」を対象とした調査の特徴として、この同居者に「親」のみではなく「配偶者」「娘/息子」が含まれてくるという点があります。この点だけでも、若年引きこもりと中高年引きこもりに質的な違いがあることが読み取ることができ、また、この調査が初めておこなわれたことに大きな意味があると言えるでしょう。
調査内容の詳細については次記事より順に触れていきたいと思います。